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第5回キャンプ 10月8〜10日(吉野川中流:善入寺島)
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第4回キャンプ 9月17〜19日(吉野川支流:鮎喰川)
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第3回キャンプ 8月19〜21日(吉野川上流:本山町)
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第2回キャンプ 7月16〜18日(吉野川支流:穴吹川)
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第1回キャンプ 6月18〜19日(吉野川下流:第十堰北岸)
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第5回研修 6月11・12日(直前ミーティングと研修)
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第4回研修 5月14〜16日(技術研修)
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第3回研修 5月3〜5日(吉野川カヌー川下りキャンプ研修)
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第2回研修 4月9・10日(野外生活技術・キャンプカウンセリング)
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第1回研修 3月20・21日(川の学校のねらい・第十堰の遊学)
第4回キャンプ 9月17〜19日
(吉野川支流:鮎喰川)
第四回川の学校は、鮎喰川。
鮎喰川は、直線で36kmのところを、43kmかけて、くねくねと曲がり、瀬と淵を繰り返しながら、吉野川に流れる。
集合一時間前には、笑顔いっぱいの子どもたちがちらほらやってくる。スタッフは「早いよ〜!」と言いつつ、子どもたちにいち早く再会できるのはやっぱり嬉しいもの。子どもたちに、今日は川で何して遊びたい?と聞くと、口々に「釣り!」「カヌー!」「飛び込みと釣りと潜り!う〜ん、どれもしたい!」と、とにかく元気がいい。釣り、見釣り、カヌー、潜り、金突き、飛び込み、焚き火、ドラム缶風呂、竹細工など、子どもたちの期待にほとんど答えてくれるのがここ、鮎喰川。蛇行しながら、いろんな川の表情をみせる鮎喰川は、たくさんの川の楽しみ方を狭い範囲で提供してくれる。
遊びだけでなく、講師も多彩。
椎名誠隊長の「あやしい探検隊」メンバーの、アウトドア料理人「りんさん」(林政明さん)と、魚突きの名人「かわっち」(川上裕さん)をはじめ、釣り名人の「こまさん」(駒寄悟志さん)、そして冒険家でモンベル社長の辰野さん(辰野 勇さん)が、日本各地から駆けつけてくださった。達人は、釣り達人の玄さん(森口玄七さん)、地元の川遊び達人、林高典さんと森出敏明さん。
りんさんは、前回までのように釣り班ではなく、今回は、キッチンスタッフと一緒に子どもたちの食事を調理してくださった。子どもたちは、りんさんのシチュー、筑前煮、親子丼に長いおかわりの列を作った。
かわっちは、前回に引き続き今回も来てくださった。かわっちの金突きに魅せられた子どもたちも多かった。子どもたちは、見よう見まねでコツを得る。そして、一度、ウグイやフナを突けるようになった子どもたちは、河原になかなか戻ってこなくなる。シュノーケルを付けて魚のいそうなところを探し、潜っては、突き、潜っては、突く。おかげで、バケツには、焚き火の網の上に乗らないくらいの魚。小魚はりんさんに習ったやり方で、子どもたちがから揚げにし、アユや、大きなウグイは、塩をふり炭火で焼く。これがまたおいしい。
こまさんは達人の玄さんと、釣り好きの子どもたちに朝から晩まで毎回熱心に指導をしてくださっている。「10匹釣れた子は、午後から、上級者向け『ゴールデンポイント』へ特別に連れていきます!」と、ミーティングでこまさんが言ったときには、釣り好きの子どもたちの目が輝いた。子どもが遊びに本気なら、講師も本気だ。講師が本気になれば、子どもはますます本気に遊び、学ぶ。
辰野さんは、カヌー教室。子どものためのカヌー教室と思いきや、内容は大人のカヌー教室以上。高度なカヌーテクニックを分かりやすく伝え、一人の子は、15分でロールというもっとも難しいといわれる技ができるようになった。カヌー教室の合間には、川の石を使った手品を子どもたちに伝授。子どもたちはその晩、スタッフひとりひとりのところへ来て、すっかり自分のものにしたマジックを得意気に見せてくれた。夕方には、河原で竹の横笛づくり教室。夜は、横笛ミニコンサート。「荒城の月」の音色が十五夜の鮎喰川をゆるやかに流れた。
地元の達人の林さんと森出さんとは、小魚を追い込んで大きな網で取る「ごろびき」をした。「がらびき」ともいう。子ども全員とスタッフや講師みんな一緒に川に並んで、貝殻を付けたロープを川底にがらがらと引きずり、上流に待ち構えている網に魚を追い込んでいく。魚がいっぱい入っていると、子どもも大人も一緒の顔で喜び、一緒の歓声で盛り上がる。
夜は、恒例の夜話。まずは、地元の達人、林さんや森出さんの昔の川遊び話。今となっては珍しい川遊び道具に子どもたちも興味津々。そして、りんさんやかわっちの夜話。おもしろい小噺や、あやしい探検隊のころからの秘話に子どもたちは笑ったり、考えたり、驚いたり。
野田さんの夜話も盛りだくさんだった。40歳を超えてからカヌー作家という、新しい職業を自分で作ったんだという話や、好きな作家や本、曲はみんな持っておくのがいいという話、英語は勉強しておいたらいいよという話、椎名さんの息子との旅の思い出、世界の川や日本の川の話など。話のあとは、心温まるハーモニカが、月でほんのり明るい河原に響いた。夜は子どもたちと同じように河原にテントを立て、一緒の河原で鮎喰川の夜を楽しんだ。
こうして、川の学校は、朝から晩まで川で遊んでいる。書店に行けば、釣りの教本や、川や自然を大切にしようという類の本は、短時間で手に入るのにもかかわらず、一日中、遊び続けて、釣りを覚え、川で泳ぎ、川を楽しむ。しかも、小学生、中学生だけでなく、高校生、大学生、20代から60歳以上の社会人までもが50人ほど、何日間もとことん本気になって川で遊んでいる。よく考えたら、なんとも滑稽な集団なのだ。
辰野さんの夜話でこんな話があった。
対岸のきれいな花がほしかったら、まず歩き出す。歩きながら、考える。橋になる丸太が近くにないか、下流に浅瀬はないかなど。下流に歩いているのを、他人が見たら、何をしているんだって言われるかもしれないけど、それはそれでいい。その「遠回り」が大事。といった話。
そういえば、小学生のときに、ぼんやりと思っていたことを思い出した。
「都会の川は、まっすぐきれいなのに、なんで山の川は、くねくねして流れてるんだろ」。
くねくねと曲がり、「遠回り」する鮎喰川を前にして、来月の川の学校、吉野川の善入寺島が早くも楽しみになってきた。次回は最終回だ。
報告:
佐賀直人
(川の学校第5期スタッフ)